ネットショッピング年齢層別データ解説!高齢者のECサイトへの本心は?
2022年09月08日新型コロナウイルス禍で世の中の消費スタイルが激変しています。
『非接触』、そして『外出自粛』をうたう日常が当たり前となり、生産から物流、そして消費スタイルまでもが変化せざるを得なくなり、変化を続けています。
そしてこの新型コロナウイルス禍は高齢者・高齢者予備軍のネット普及も否応なく促進させて、徐々に高齢者・高齢者予備軍の消費スタイルまで変化させています。
現在の日本の年齢層別の人口構成を知り、ネットショッピングの実態を利用者の年齢層別で探り、現状高齢者及び高齢者予備軍がネットショッピングにおいてどんな困りごとを抱え、希望するのかを探ってみたいと思います。
日本における高齢者人口
2021年(令和3年)10月1日現在、日本の総人口は12,550万人です。
この数字は2010年(平成22年)の12,806万人をピークに減少の一路をたどっていることを記憶にとどめてください。
そして、日本の総人口は減少に向かいつつも、高齢者年齢(65歳以上)の人数は右肩上がりで増えていくのです。
あわせて、生産年齢人口(15歳から64歳)は減り続け、この生産年齢人口で支える65歳以上の人口の負担は重くなっていき、昭和25年1950年に12.1人で65歳以上を1人、支えればよかったのが、令和3年2021年には2.1人で65歳以上を1人支えねばならないようになっています。
高齢者層の多い、年齢層でいびつな人口比率の日本に向かっています。
高齢者のネットショッピング依存度
ネットショッピングの年齢層別利用度は、誰が考えても若年層に多く、高齢化していくにしたがって低くなることには間違いはありません。
しかしながら、現在誰もが不便を強いられている新型コロナウイルス感染対策で変化が起きています。
ここに野村総合研究所がアンケート調査を行った年齢層別のネットショッピングの利用経験率の結果があります。
11月6日に公表した「生活者1万人アンケート調査(8回目)」2000年に始まり、3年おきの調査で最新が2021年です。
20代、30代の利用経験割合がそれぞれ80%、86%と高く、60代が42%、70代が20%となっております。
新型コロナウイルスが流行し出した2020年を機に、30代〜70代のネットショッピング利用率が大きく上がったと考えられます。
※「生活者1万人アンケート(9回目)にみる日本人の価値観・消費行動の変化|株式会社野村総合研究所コンサルティング事業本部マーケティングサイエンスコンサルティング部」より
コロナ対応後のネットショッピングの年齢層での動向
2020年4月に緊急事態宣言が発出されて、不要不急の外出の自制、飲食店舗への休業要請などで総務省統計局の資料によると、2020年5月の家計調査結果による消費支出(二人以上の世帯)は、一年前と比較すると16.2%と大きく減少しました。
これは比較可能な2001年1月以降で最大の落ち込みだそうです。
そんな中で65歳以上のネットショッピング利用は2019年中においてはほぼ横ばい状態であり、全体の割合の増加を抑制する要因にもなっていたのが2020年4月に緊急事態宣言が発出されて一気に上昇しています。
65歳以上のネットショッピング利用に限るわけではなく、日本中が同様な過去経験しなかった生活を強いられたための結果ではありますが、ネットショッピングに一番縁遠くネット操作に一番苦手意識のある世代である高齢者世代が背に腹をかえることが出来なかったということでしょう。
このネットショッピング利用世帯の割合のなか、65歳以上の高齢者の利用率が3割を超えたことは無視できない注目すべきデータでしょう。
※「総務省統計局 統計Today No.162 新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング(家計消費状況調査の結果から)」より
高齢者のネットショッピングの特徴
高齢者のネットショッピングではパソコン、タブレットとスマートフォンが利用されています。
ずいぶん普及しているように見えるスマートフォンですが、60歳以上の利用率は44.5%なのです。
国際的に比較すると、アメリカ62.9%、ドイツ65.2%、スウェーデン58.8%となっており、日本の44.5%は決して高い比率ではありません。
※「内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」( 令和2年度) 図表 3-7-8 利用している情報通信機器」より
ガラパゴス携帯は3G回線サービス終了とともに使用不能となりますのでそれ以降は電話、メール機能を求めスマートフォン利用率は100%に近づき、この60歳以上の年齢層がスマートフォンからネットショッピングを行う可能性が高くなっていくことが予想されます。
高齢者層の求めるネットショッピングのスタイル
ネットショッピングを行う年齢層では高齢者と定義付けられる65歳以上には、前述のパソコン、タブレット、スマートフォンなどの通信機器に苦手意識があります。
しかしながら、すでに現時点でも否応なく、パソコン、タブレット、スマートフォンの使用の必然性を感じることが多いと思います。
世の中はペーパーレス化に向かっています。
マイナンバーカードを含めた行政手続き、今回の新型コロナワクチン接種の申し込みばかりか、ウェブでの請求書も増えこれまで通りの紙の請求書を頼めば別途用紙代の請求まで届くようになっています。
そして、この新型コロナウイルスは高齢者をネットショッピングに誘うこととなりました。
感染防止のために求められる『非接触』にネットショッピングは即応しています。
物流技術の向上もあり、注文すれば翌日に届くものもあります。
実はこの文章を書かせていただいてる私は還暦を迎えた60歳、高齢者予備軍です。
パソコンもスマートフォンも普通に使いこなしていますがネットショッピングの経験はそれほどありませんでした。
周りから笑われますがモノは自分の目で確かめて買わないと気が済まない昭和世代の生き残りです。
しかしながら、ご多分に漏れることなく今回の新型コロナウイルス禍で買い物もしづらい状況が続いてネットショッピングに久しぶりにチャレンジしました。
その時に思ったことなどを後述させていただきます。
ネットショッピングに不慣れな高齢者層及び高齢者予備軍層の求めるスタイルは『安心と簡単』でしょう。
慣れないパソコンやスマートフォンで注文する事、そして代金の支払いに関しての事など、初めての事を思い出せば誰もが不安があったはずです。
そして、そんな不安は当然ながら若い人たちより多いです。
しかしながら、高齢者層の強みは若い世代よりも多少の蓄えがあり、住宅ローンなどの負債が無い、もしくは少ないことです。
ですから多少の手間や、かかる時間を多少であれば金銭で解決するかも知れません。
この『多少の手間や、かかる時間』の解決がネットショッピングに不慣れな高齢者層及び高齢者予備軍層を惹き付ける要因になるとお考えください。
・手続きの問題
まずは会員登録、そして決済のためのアカウント登録の手続きの面倒くささ。
同じ商品が安い価格であるのを見つけてもそれはいつも使っているサイトとは違うものであれば、多少の価格の高さも無視して、面倒くささとそれまで付き合った安心感でそれまで付き合ったサイトで購入するかもしれません。
パソコン、スマートフォンに不慣れな高齢者及びその予備軍にとってはそれくらい重要なことです。
私もそうですが、最初に行ったネットショッピングをしばらくは使い続ける傾向があると思います。
理由はいたって簡単、これまで述べてきたように『安心と簡単』で、一度出来たという経験の安心と、また行わなくてもよい会員登録やアカウント登録の手続きの簡単さです。
ですので、最初に始める高齢者及びその予備軍をいかに取り込むかが重要なことだと思います。
・サイト入り口の表示
サイトの入り口がわかりにくい、これも大きな問題です。
初めて使ったサイトにどうしても依存の傾向があるのであるならば、一番に高齢者層及びそれに準ずるみなさんをいかに引き込むか、一番大切なことのように思えます。
わかりやすく、買い物しやすく誘導してください。
私および同世代からサイト運営者の皆さまへのお願いです。
・字は大きくして欲しい
当たり前ですが、体力の減退とともに視力も落ちています。そのため、やはり字が読みにくいサイトには抵抗があります。
字や表示記号やボタンが大きなサイトを選びたいです。
・連絡先に電話番号が欲しい
サポートの手間やリモートワークの普及により、電話でのお問い合わせを受け付けなくなった企業もあるかと思います。ですが、機器に抵抗がある高齢者に撮っては、メールやチャットでのお問い合わせはそれだけで苦労になってしまいます。
万一にそなえて、問い合わせ先に電話番号があれば私たちの世代には非常に安心でサイト選定時の大きな判断材料となります。
・カートは入れっぱなしでいいのですか?
今一、利用方法がわからず、カートに入れっぱなしにすることがあって、あとから「あっ」と気づくのですが、あれは放置していてもかまわないものなのですか?
どこかに「このサイトから離れる際には」のような但し書きとともに、「カラにして下さい」のような標記があったほうが親切だと思います。
そんな些細なことが私たちの世代では気になったりします。
・二次的なサービス
私は料理が好きで食材をネットショッピングで購入することがあります。
その際に類似商品やおススメ商品が出たりしますが、その際にその商品を使っての簡単レシピが出てくれば、独り身になった料理不得意な男性には参考になって重宝だと思います。
・その他
上記カートの件のような私たちには初めての事で対応に困り、さてその先はどうしたらいいのかその手立てもサイト画面を見ていてもわからず、別サイトへ移ってしまうような流れもあります。操作に不慣れな年齢層にも照準を当ててサイト画面の設計をしていただけたら非常に嬉しいです。
あわせて先も述べた通り、ガラケーから否応なくスマートフォンに乗り換える高齢者・高齢者予備軍の年齢層がスマートフォンからネットショッピングに入ってくるであろうことに注目いただきたいと思います。
まとめ
日本の人口の今後の推移を見てもネットショッピングの年齢層のなかでは、高齢者層及高齢者予備軍層を重要なターゲットに位置するべきで、その年齢からくる特性に基づいた対応を行うことが重要なことでしょう。
そして、いずれ、今の若者たちも高齢者層に移行していきます。
多くの高齢者向けの対応は、いずれ時間とともに高齢者数が増え続けることも考えれば決して無駄な対応とはならないでしょう。
一度根付いたネットショッピングがこの先衰退することは無く、無駄の少なくなる外出や無駄を少なくしたお届け時の梱包はこの先世界が進む脱炭素社会にも適応します。
今、私たちがこのネットショッピングの年齢層別利用者に注視し、高齢者への対応に注目することはとても意義のあることと思われます。